Mose's Diary

Media Arts, Science and Technology

アメリカ大学院PhDプログラムへの合格可能性を上げるためには

アメリカ大学院PhDプログラムの合格可能性を上げるためには 前回の記事では、アメリカの大学院 博士課程(PhDプログラム)への出願のために必要なものと、準備する手順などを書きました。

s-mose.hatenablog.com

今回は、アメリカ大学院 PhDプログラムに合否に直結する重要なポイントをまとめていきたいと思います。

前回の記事でも言及した通り、アメリカの大学院PhDプログラムの選考は、研究実績・職歴・スキル・SoP・英語などの総合力で評価されます。また、大学によって選考基準が異なります。そのため、日本の大学受験のように、これだけ出来ていれば確実に合格できる、という必勝法はないと思います。

しかし、出来るだけ出願書類の質を高め、合格の可能性を引き上げることは出来ると思います。この記事では、そのための戦略を立てる上での重要なポイントをいくつか紹介させていただきたいと思います。

筆者自身もここに記述したことを全て満たしていた訳ではなく、受験を終えてからの後悔も含めて残しておきたいと思います。

※あくまでも私の経験則で書いているので、当てはまらない場合もあると思います。他の情報も参照していただきながら、サンプルの1つとして参考になれば幸いです。

合格可能性を引き上げる重要ポイント

現役学生と比較し差分を埋めるための計画を立てる

アメリカのPhDプログラムは、一般的にMasterプログラムに比べて取る人数が少なく倍率も上がります。特にトップのプログラムは、30〜50倍もの競争を勝ち抜いた人たちのみが合格をもらうことができます。要求されている水準に達していなければ、他の受験者と同じ土俵にすら立っていないということもありえてしまいます。

そのため、どういう人たちがそのプログラムにアクセプトされるのか、を知ることがまず大きな第一歩となります。研究成果、インターン経験、スキルなどがどれぐらい要求されているかを知れば、そこを目指して計画を立てることができます。

どういった出願者が合格を貰っているのかという情報を収集するために私がやったことは、自分の行きたいPhDプログラムの学生を調べるということです。実際に合格した学生を把握することは、要求されている水準を知る上での大きな指針となります。

具体的な方法を紹介します。まず、自分の進学したい研究室またはプログラムのWebページから、そこに所属している学生を見つけます。そして、その学生のPersonalページがあれば(CS/IS系の学生の場合作っていることが多い)アクセスしてみます。CVのリンクを貼ってくれていたり、研究内容を紹介していることが多いので、それらを参照して、その学生が出願時にどれぐらいの実績があったか分析してみましょう。もしPersonalページがなければ、Google Scholarで検索するとその人のPublicationリストが見ることができ、出願時に大体どれぐらいの成果を上げていたかを予想できます。

これによって、実際に合格した人の出願時の実績を知り、多くの場合自分とのギャップを実感します。調べてみるとわかるのですが、やはり実績がすごい方々が多いのです。国際学会のフルペーパー数本、某有名企業インターン、複数のコンペ受賞などなど。。もちろん、英語スコア、推薦状、SoPなど、調査では見えない要素も多いのですが、そのような実績を持った人たちが強力な推薦状やSoPを書いてくることなど容易に想像できます。そのような強力なバックグラウンドを持った人たちが出願する中で、何か光るものを出願書類として出さなければ、合格を勝ち取ることはできないということになります。

だからこそ、この調査が非常に重要なのです。事前に合格するために必要な水準を知ることで、今の自分の実績や実力と比較し、そのギャップを埋めるための計画を立てることができます。

目立った研究実績を残す

PhDの出願において、最も大事なことは、見える形で研究実績がある、ということだと私は考えています。PhDプログラムの選考において、ほとんどの教授は、自発的に研究を行い、研究成果をあげる事ができる学生を取りたいと考えています。そのため、トップの国際学会に主著論文が採択されているというのは非常に強いアピールになります。

また、日本人の場合、早くから留学対策を行なっている中国人や韓国人のようにTOEFL iBT120点近くを提出するような出願書類を用意するが難しいことが多いと思います。私自身もそんなにいいスコアを提出することは出来ませんでした。スコアで戦うことが難しければ、研究において目立った実績を残すということは、かなり重要だと私は思います。

また、研究実績を持っているか持っていないかが、他の出願書類にも大きく影響を及ぼします。例えば、Statement of Purposeを書く際には、具体的な研究プロジェクトをもとに、自分のやってきたことやこれからやってみたい研究への関心について書くとより説得的になります。逆に、具体的な事例が無く、漠然とこういう研究をやっていみたい、という文章では説得力がないと思われるかもしれません。他にも、推薦書やCV、教授とのコンタクトの観点からも、研究実績を持っているかいないかでは大きな差を生むと思います。

私の場合、国際学会で論文発表した時に、今のアドバイザーが発表を見に来てくれていたそうです。その論文発表がなかったら、恐らく合格はなかったのではないかと思います。

日本の奨学金を獲得する

奨学金を獲得すべき理由

アメリカのPhDプログラムの場合、授業料が免除され、十分な生活費をもらいながら研究出来ることがほとんどです。(合格する時に貰うオファーレーターに財政支援条件が載っています。)

では、なぜ日本から奨学金を貰う必要があるのでしょうか。主に以下の3つの理由から、日本の奨学金に応募することをお勧めします。

1. 大学や研究室が負担する必要がなくなるため合格し易くなる場合がある

奨学金を持っている学生を取ると、研究室や専攻はその学生の授業料や生活費を負担する必要がなくなります。予算に余裕がない研究室や専攻にとっては、優秀な学生をタダで採用することができるので、そのような学生の方が採用しやすいです。実際に、不合格通知を受けていたのにもか関わらず、奨学金に採択されたことをメールで報告したことで合格にしてもらえた、というケースを耳にしたことがあります。また、予算の有無にかかわらず、同じような実績や能力の学生が複数人いた時には、奨学金を持っているとかなり有利に動くと思います。

2. 奨学金の獲得が優秀であることの証明になりうる

大学院留学の奨学金は、倍率が厳しいことが多く、10倍以上のものも多々あります。奨学金を持っていること自体が、その学生が優秀であると客観的に認められたことの証明にもなり得ます。そのため、多くの出願者がCVに奨学金の取得を記載して、"実績"の1つとしてアピールしています。

3. 入学してからの負担が減る

これは出願時にはほとんど意識していなく入学後に実感したことですが、奨学金を得ることで入学してからの負担を減らすことが出来る場合があります。これは、どのプログラムかや、どれぐらいの額の奨学金かによって異なると思います。私のプログラムでは、Teaching Assistantとして2学期間働かなければいけないですが、奨学金を持っている間は免除されます。1週間に15時間ほど働く必要があるTAの義務が免除されるのは、生活に慣れたり研究に集中するのにかなり助かると思います。

主な奨学金リスト

以下が、学位留学のための主な奨学金リストです。

太字は私が応募した奨学金です。

強い推薦書をもらう

推薦書については前回の記事でも書きましたが、出願において非常に重要なのでもう少し書きたいと思います。

「強い」というのは必ずしも誰もが知っているような有名な教授からもらう推薦書のことではありません。もちろん、出願先の教授が知っているような先生から推薦書をもらうのは効果的だと思いますが、もっと重要なことは、出願者の研究能力が客観的に証明されている推薦書であるか、ということだと思います。

どんなに有名な先生からの推薦書でも"It is my pleasure to reccomend..."というような汎用性のあるテンプレが並んでいるだけでは、推薦書として意味をなしません。恐らくそのような推薦状を出したらすぐバレますし、逆に悪い印象を与えかねません。

採択された論文(出来ればトップカンファレンスの主著論文)がある場合、出願者がその研究論文の採択に大きく貢献した、ということを推薦書で書いてもらえれば、それは強い推薦書になると思います。具体的な研究プロジェクトや授業名を挙げてもらいながら、どういう点でその学生は貢献したのか、どういう態度で研究に臨んで来たのか、計画性はどうだったのか、などを詳細なエピソードと共に書いてもらうことが大切だと思います。

コンタクトを積極的に取る

コンタクトを事前に取ることで合格可能性が確実に高くなるか、とは言えませんが、コンタクトを取るべきメリットはいくつかあります。例えば...

1. 口約束で合格を貰える場合がある

私自身は経験がありませんが、知り合いのイギリスのPhDプログラムに進学する方は、コンタクトで事前に口約束をもらって、実際にそのプログラムに合格したようです。 研究の関心が一致して教授が気に入ってくれればそのような特殊な例もあるようです。

また逆のパターンで、今年は学生を取ってないよ、と事前に教えてくれる場合もあります。それを知っていれば、出願する必要があるか、他に一緒に研究したいFacultyがいるかどうか、もう一度検討することができます。

2. 奨学金を応募する時に有利

いくつかの奨学金では、志望先の先生とのコンタクト状況を記載する必要があります。そうでない奨学金であっても、どの先生のもとで何を研究したいか、ということは書類や面接で問われることです。事前にコンタクトを取って具体的な話を進めることで、奨学金の選考で有利になると思います。

3. 目当ての先生に出願書類を見てもらいやすくなる

自分の出願書類をアドバイザーの目に止まらずに落とされてしまう、ということを防ぐことができる場合があります。出願時にメールを送った先生から、"Did you mention me in your personal statement--makes it easier for me to find in our system." や "I’ve already seen your application in the system" というような返事が来たことがあります。

ミニマムは超えよう

これは私の失敗に基づくお願いです。行きたいプログラムのミニマムは出願までに必ず超えましょう...。普通に足切りをくらってしまいます。出来れば、学部であれば4年の春学期、修士であれば2年の春学期までに英語のミニマムは達成していることをお勧めします。先延ばしにしていると、奨学金、学会発表、出願書類準備等が一気に押し寄せて回らなくなります。

まとめ

ここまで、アメリカPhDプログラムに合格する上で重要なTipsをご紹介して来ました。まとめると、合格する水準を知り計画を立て、目立った研究実績を残し、奨学金を取り、研究実績を客観的に証明する推薦書を貰い、コンタクトを取り、ミニマムは超える、という感じです。笑

書ききれなかったことや、当てはまらないことももちろんあると思いますが、アメリカで学位留学を目指す上での一つの参考になれば幸いです!

では、出願まで諦めず頑張ってください!!

他にも以下の船井奨学金の体験談は非常に役に立つと思うのでチェックして見てください。 www.funaifoundation.jp



質問等は、コメント・メール等でお気軽に下さい。
Twitter: @motulo
Email: mose.sakashita [at] gmail.com